人は海外旅行に行く前に何をするだろうか?多くの人は、ガイドブックを購入してきて、観光スポット、美味しいレストラン、ブランドショップ等の情報を集める。それで終わってしまうことがほとんどではないだろうか。だとしたら、とても大切なことが見落とされている。その国の常識を調べておくということだ。
例えば、アメリカのホテルのベルマンやドアマンに払うチップの相場を知っているだろうか?レストランでは、自分のテーブルを担当するスタッフが決まっていて、それ以外のスタッフを呼び止めようとすることはマナー違反だということを、知っているだろうか?
私は10年間アメリカのホテルにいた。その経験からいうと、ほとんどの日本人は、チップを「よいサービスへのご褒美」と考えている。だから、サービスが悪いと感じると、額を減らしてしまう。だが、こちらで仕事に従事する人々にとっては、チップは労働賃金の一部で、慣習として決まっている相場額を受け取ることを当然の権利と考えている。現在の相場は、ベルマンには荷持一個につき2ドル。ドアマンには一人につき1ドル50セント。三人で三個のスーツケースを持ってホテルに到着すれば、ベルマンに6ドル。ドアマンには、四捨五入して5ドルを払うことになる。しかし、それだけの額を払う日本人はあまりいない。
レストランで追加注文をするとき、多くの日本人は手をあげて身近にいるスタッフの注意を引こうとする。だが、こちらでは分業性が敷かれているので、彼らは自分の担当しているテーブルしかサービスしない。この態度に、日本人は無視をされたと気分を害する。そして、サービスが悪いと言って、チップの額を減らしてしまうことさえある。
知識がないために、こうしたルール違反が起きているのが現状だ。その結果、ホテルの従業員は日本人ゲストから離れていたいと思うようになる。勘定書きに、予めチップの額が書かれるようになる。そして、それがまた、日本人を立腹させることになる。この悪循環は一刻も早く改善されなくてはならない。
日本人の海外渡航者数は1600万人を超えている。延べ数にすれば、100人中13人もの人が海外旅行をしていることになる。今、我々は、一人一人が努力をして、海外における日本人の尊厳を守らなくてはいけない時代にいる。そのためには、渡航先の最低限の常識を知っておくことが必要不可欠なことなのだ。
アメリカのこうした情報を広めるために、私は「世界最高のホテル プラザでの10年間」(小学館)を書いた。